🟡長男伝説シリーズ第4話

「バイト代で、母にステーキランチを。」

その日、いつものようにソファでグダグダしてたら、

長男がふいに聞いてきた。

「なんか食べたいもんある?」

ん?急にどうした?

と一瞬警戒する母に、彼は続けた。

「バイト代入ったからさ、ご飯でも行こっかなって」

……はい、泣いていいですか。

連れてってくれたのは、

近所のちょっとだけいいお店のランチ。

ステーキランチ、1,000円。

母、遠慮しようか一瞬迷ったけど……

「じゃあ、ありがたく」って言って頼んだ。

だって、嬉しすぎて、断るなんて無理だった。

中学生の頃は、

学校に行けず、毎日バトル。

思春期の壁+特性で、何度も泣いたし、怒鳴ったし、ぶつかった。

正直、「この子の将来どうなるんだろう」って夜中に泣いたこともあった。

でもこの日――

目の前の彼は、自分で働いたお金で、

母にご飯を奢ってくれていた。

その姿に、

これまでのすべてが、少しだけ報われた気がした。

食べながら彼が言った。

「ママ、いつもありがとうな」

「これから、ちょっとずつ返していくから」

……いや、もう今ので十分だよ。

それだけで、母はまた、頑張れる。