🟡長男伝説シリーズ 第6話
「“俺はダメだ”って言う君に、母が返した言葉」
高校1年の夏。
二学期が始まっても、登校は不安定だった。
行ける日もあれば、行けない日もある。
朝、制服に着替えたのに、途中で動けなくなることもあった。
私は“待つスタイル”を選んだ。
「無理に行かせることが目的じゃない」
「自分で行きたいと思った時に行ければ、それでいい」
そう思って、急かすことはしなかった。
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でも、現実は優しくなかった。
時間は過ぎ、気づけば冬。
学校から言われた。
「欠席日数、40日を超えています」
「補習が必要です」
「100時間以上になります」
え?100時間?
え?冬休み、消滅?
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もちろん、息子も知らなかった。
「は?そんなの聞いてないし」
「無理やって」
「俺、もうダメやわ」
その言葉に、私は胸が締めつけられた。
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**“俺はダメだ”**って、
何度もそう言う君を見て、
私は自分を責めた。
もっと早く知ってたら。
もっと強く言ってたら。
もっとちゃんと、支えてたら。
私は甘かった。
優しさのつもりでかけた言葉が、
もしかしたら逃げ道を広げてしまっていたのかもしれない。
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でも、それでも。
私は君に、こう返した。
「ダメじゃないよ」
「休んだ日も、ちゃんと“生きて”たんだよ」
「頑張れなかったことは、悪いことじゃない」
「でも、“これからどうするか”は、自分で決めなさい」
「母さんは、何回でもやり直す君を応援するから」
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その言葉がどこまで届いたかは分からない。
だけどその夜、彼は静かに補習のスケジュール表を見ていた。
目の前にある現実と、ようやく向き合い始めたように見えた。
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次回予告:
🟠第7話「補習地獄開幕!~100時間の年末年始サバイバル~」