「“退部”という選択。守ったのは、心だった。」
「無理しなくていいからね」
「やめるって選択も、ちゃんとあるよ」
顧問から心ない言葉を浴びせられたあの日。
家に帰ってきた息子に、私はそう声をかけた。
息子は、ポツリと一言だけつぶやいた。
「……やめる。」
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それは、逃げじゃなかった。
あの子なりに、自分の心を守るための勇気ある決断だった。
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退部の意志を伝えるため、
息子は一人で職員室に行った。
メイン顧問は不在。
話を聞いてくれたのは、サブの先生だった。
息子は、自分の口で、理由も含めて話した。
「あの部活では、もう頑張れない」
「僕には向いてなかった」
「これ以上いたら、もっと嫌いになりそうだった」
それだけでも、私は十分すぎるほど誇らしかった。
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……でも、あのメインの顧問。
退部のあとも、
何も言ってこなかった。
何の言葉もない。謝罪もない。ねぎらいもない。
学校で私とすれ違っても、
完全に無視。目も合わせない。
もうね、ほんとに思った。
「……それで先生なの?」
「インクルーシブ教育って、口だけかよ?」
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いろんな特性の子がいる時代。
多様性を受け入れる、そんな教育が求められてるはず。
だけど――
現場の先生が理解してなければ、何も始まらない。
「ダメな子は排除する」
「迷惑をかける子は扱いづらい」
そんな空気が、静かに蔓延してる。
私は、怒りで震えていた。
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退部したあとの息子は――
やっぱり学校に行けなくなった。
登校しぶりが始まり、
朝になると起き上がれない。
顔色も悪く、ため息ばかり。
「学校にいるだけで、また否定される気がする」
「誰かの前に出るのが、こわい」
そう呟いた息子を見て、私は思った。
この子は、たたかっていたんだ。ずっと。
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退部したことで、彼の心は少し守られた。
だけど、同時に心にはたくさんの傷が残った。
大人の言葉、大人の態度、大人の冷たさ。
それが、思春期の少年には想像以上に深く刺さっていた。
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私たち親子は、また一からやり直しだった。
でも私は、やめたことを一度も否定しない。
それは、負けじゃない。
むしろ、自分の心を守るための、立派な“勝ち”の選択だったと思う。
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次回予告:
これまで長男伝説をご覧にいただきありがとうございました。
次はテーマを変えてIQ67軽度知的障害の次女にスポットをあてます。「次女伝説編」たくさんの方と共感しあえたらと思います。
どうぞ宜しくお願いします🙇♀️