🟡長男伝説シリーズ 第11話

“退部”という選択。守ったのは、心だった。」

「無理しなくていいからね」

「やめるって選択も、ちゃんとあるよ」

顧問から心ない言葉を浴びせられたあの日。

家に帰ってきた息子に、私はそう声をかけた。

息子は、ポツリと一言だけつぶやいた。

「……やめる。」

それは、逃げじゃなかった。

あの子なりに、自分の心を守るための勇気ある決断だった。

退部の意志を伝えるため、

息子は一人で職員室に行った。

メイン顧問は不在。

話を聞いてくれたのは、サブの先生だった。

息子は、自分の口で、理由も含めて話した。

「あの部活では、もう頑張れない」

「僕には向いてなかった」

「これ以上いたら、もっと嫌いになりそうだった」

それだけでも、私は十分すぎるほど誇らしかった。

……でも、あのメインの顧問。

退部のあとも、

何も言ってこなかった。

何の言葉もない。謝罪もない。ねぎらいもない。

学校で私とすれ違っても、

完全に無視。目も合わせない。

もうね、ほんとに思った。

「……それで先生なの?」

「インクルーシブ教育って、口だけかよ?」

いろんな特性の子がいる時代。

多様性を受け入れる、そんな教育が求められてるはず。

だけど――

現場の先生が理解してなければ、何も始まらない。

「ダメな子は排除する」

「迷惑をかける子は扱いづらい」

そんな空気が、静かに蔓延してる。

私は、怒りで震えていた。

退部したあとの息子は――

やっぱり学校に行けなくなった。

登校しぶりが始まり、

朝になると起き上がれない。

顔色も悪く、ため息ばかり。

「学校にいるだけで、また否定される気がする」

「誰かの前に出るのが、こわい」

そう呟いた息子を見て、私は思った。

この子は、たたかっていたんだ。ずっと。

退部したことで、彼の心は少し守られた。

だけど、同時に心にはたくさんの傷が残った。

大人の言葉、大人の態度、大人の冷たさ。

それが、思春期の少年には想像以上に深く刺さっていた。

私たち親子は、また一からやり直しだった。

でも私は、やめたことを一度も否定しない。

それは、負けじゃない。

むしろ、自分の心を守るための、立派な“勝ち”の選択だったと思う。

次回予告:

これまで長男伝説をご覧にいただきありがとうございました。

次はテーマを変えてIQ67軽度知的障害の次女にスポットをあてます。「次女伝説編」たくさんの方と共感しあえたらと思います。

どうぞ宜しくお願いします🙇‍♀️